彼岸・対岸

もう一つのブログとパラレルな世界についてのブログ

男が、杖ついた中年の女に気づいてから、彼女が目の前にたどり着くその時まで、男は、その場所から一歩も前に進もうとはしなかった。男にはそれがなぜかわからない。女も、さもそれが当然であるかのように、男とほんの数歩の距離まで来ると、じっと男に目を据え、男の存在を十分に理解したようで、語りはじめた。

「ここは、良いところでしょう」と女。

「ええ」と男。